できるから~と言ってキレるヒト

 以前町工場に勤めていたことがある。二十人ぐらいの古い設備。どこにでもありそうだが、どこにもない特徴があった。世の誰も知らない、いや理解できない現象があった。
 機械現場でNC旋盤を使っていた。材料をセットするとこまで人力でやって、あとは自動でプログラムどおり工具が動いて製品ができる。開始ボタンを押せば完了するまで誰がやっても同じ時間で、できる、はず。なのに異論があるらしい、元上司は。
一個辺り45分で加工完了する。何回やっても同じ。同じ部品なら当然同じプログラムで設定どおり動くのだから時間に変わりがあるはずない。何度時計で計っても45分に誤差はなかった。そのことが気に入らない、現実と違うと感じるヒトがいる。信じられない出来事だった。
 その日は確か3/5日だったと記憶している。もう25年以上前のことだが覚えている。朝イチに10個材料があった。一個45分だから全部で450分、7時間と30分後が完了予定時間。これは自動で加工する時間なので材料セットの手間も考慮しないといけない。定時まで8時間ー7.5時間=0.5。30分。一個3分でセットは無理なので残業確定。ではないのだよ、絶対に違うのだよ、現実が分からないのか、状況を見ろ。←元上司の霊が降りてきた。
 このときは何が起きたか、まるで分からなかった。加工は3個まで出来ていた、4個目が機械の中で回転している。トラブルがときどき起こるので重大な故障に繋がらないように、非常ボタンを押せる位置で待機していた。今までの前任者も同じ作業風景であった。入社当時の観察では。何もしないで見ているだけが気に入らないのか。全く違う。どちらにしろ7時間半後にしか完了しない。自動なのだから。セットの手間をゼロとしても。
元上司は烈火のごとく怒った。何で出来てないんだ!要らないとでも思っているのか!と作業票を顔に押し付けてきた。作業伝票には雑用紙に完了予定日が手書きで記入してあった。3/5と。
まだ午前中。出来ているはずがない。今朝材料が持ち込まれたばかり。その時はまず上司に伝票が渡され、手書きの日付を記入して各材料を確認して伝票を置いていくので、この方が知らないはずがない。何が何だか本気で分からなくなった。催促か?いやこの方が一番知っている。この機械が導入されて使えるように立ち上げたのはこの人自身なのだから。その当時は大分苦労されたらしい。会社で初めてのNC機械。誰も経験がなく、プログラム、操作方法はメーカーの研修程度で実践は全部試行錯誤で成し遂げた。プログラムもその当時のものがそのまま使われている。このヒトが一個辺り45分を設定したのだ。材料が持ち込まれた時間も把握している。なのに顔に押し付けられ紙はなんだ。何が彼をそうさせたのだ。在籍当時は何も理解できなかったが、今は答えが見えている。半分ほど。これから、少しずつ明かしていく。

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